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朝日新聞 池澤夏樹氏「終わりと始まり」より 

明日は水無月の満月。夏の日に、左脳の一休みに、2点ご紹介いたします。どちらも、今ここで触れて、胸に深く入ってくる感じがします。


京都は祇園祭りのとき。17日はどうしてもまじめに体を休めた方がよさそうなので、宵山に明日か明後日行ってみたいと思います。
みなさま、夏を味わいつつ、ご自愛くださいませ。ではまた~♪

①作家 池澤夏樹さんの朝日新聞での文章。ブログに書かれている方からの転載です。
池澤さんの作品をいつかゆっくり森の中で読みたい。。。

②それから、もう何度も見ている方もおられるかと思いますが。まだの方はぜひ!
1992年6月。ブラジル、リオ・デ・ジャネイロでの「環境と開発に関する国連会議(環境サミット)」に集まった世界の指導者たちを前に、たった12歳の少女、セヴァン・-スズキが語った伝説のスピーチ。
youtubeです。
http://www.youtube.com/watch?v=C2g473JWAEg

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①朝日新聞7月5日付夕刊 池澤夏樹氏「終わりと始まり」より転載


政治というもの、原理はわかっているつもりだ。
大は国家や国際機関から小は従業員数名の会社まで、
複数の人から成る共同体では誰かが代表となって
運営の方針を決めなければならない。その方針は
参加者みんなの総意を反映することが望ましい。

しかし人が十人いれば意見は十通りある。大人数なら
必ず党派ないし派閥ができる。意見を整理して総意を
まとめるプロセスが必要になる。そのプロセスのこと
を政治と呼ぶ。

代表に圧倒的な権力があれば政治は容易だろう。
多数の支持でその座に就いたのでもいいし、暴力で
それを得たのでもいい。ともかく反対意見を力で
封じて共同体を一定の方向に進めることができる。
(例として隆盛期のナチス・ドイツを挙げておこう)。

強力な指導者がいないと、政治の場は乱戦となる。
決定的な力を持たない指導者たちがボールを奪い合う。
審判はいるのかいないのか。国家レベルの政治の場合
混迷はいよいよ深くなって、時にはゴール・ポストが
逃げたりして、行く先はなかなか見えない。

菅直人の政府が迷走しているとメディアが伝える。
彼の性格に対する攻撃もずいぶん激しい。会ったことは
ないが、ひょっとしたら友人にしたくないような人なの
かもしれない。

明らかなのは、彼には圧倒的な支持はないということだ。
最盛期の小泉政権のような安定は望むべくもない。
さまざまな力が彼を首相の座から降ろそうとしている。
ポスト小泉の小型の首相たちはみな政権を投げだしたと
いうので批判された。今、菅首相は政権にしがみついて
いると批判されている。

政治はまず力である。産業界の求めるものと環境問題に
関心のある市民の求めるものは違う。その間で何らかの
結論を出さなければならない。互いに理性的に説得し合う
のは無理だから、露骨なパワーのバトルになる。見ていて
おもしろいからメディアは詳細に伝える。

外から見ればゲームだ。
名を成す政治家の多くはゲームに強い。発言のスタイルで
大衆の人気を博するタイプもいるし(例えば小泉淳一郎や
石原慎太郎)、裏からの工作で多くの議員をまとめて強い
派閥を作る者もいる(例えば小沢一郎)。

正直に言えと、ぼくはこの種のゲームに関心がない。勝敗の
行方を追うのはおもしろいとしても、国家は個人の資質に
よって左右されるにはあまりにも大きい。王政は暗愚な王が
出た時が悲惨だから消えたのではなかったか。

首相の性格はどうでもいい。政策だけで政治を見よう。

小泉政権がしたことはぼくは評価しない。生活保護世帯の
増加などで明らかなように、日本は所得格差が広まって
住みにくい国になった。

今、菅首相は「再生可能エネルギー特別措置法案」を
通そうとしている。この問題への彼の姿勢は一貫している。
初当選した翌々年の1982年に、衆院科学技術委員会で
再生可能エネルギーの普及を訴えた。

今回も5月6日には浜岡原発の停止を中部電力に申し入れ
10日には政府のエネルギー計画を白紙とした。送電事業を
電力会社から独立させる「発送電分離」に言及し、26日の
G8サミットでは一千万戸の家にソーラー・パネルを置くと
いう構想を発表した。

ぼくはどれにも賛成する。

その上であまり勘ぐりたくないと思いながら、この「政局の
混乱」というのは要するに、電力政策の転換への抵抗が理由
なのではないかと考える。主体は産業界、経済産業省、自民党
ならびに民主党の一部であるのだろう。

これはあまりに単純化した図式だ。すべてを敵と味方に分ける
のはまるでジョージ・ブッシュの世界観だと自分でも笑って
しまう。しかし、そう見ると納得できる部分があるのも確か
だし・・・などと思いは揺れるのだ。

このゲームにはメディアも参加している。週刊誌の見出しは
創意工夫の限りを尽くして菅直人の悪口を書いている。
悪辣で狡猾な人物だと言う。

しかし、悪辣で狡猾だろうがなかろうが、それはどうでも
いいのだ。彼には失策も多々あるだろう。溜飲を下げたいの
ならペテン師とでも何でも呼ぶがいい(ただし投げた泥は
自分にも返る)。

今、菅直人には罵詈雑言に耐えて電力政策の転換の基礎を
作ってほしい。策謀が必要ならそれも使い、とんでもない
人事も実行し、ぎりぎりまで居座り、改革を一歩進めてほしい。

なぜならば、福島の惨状を見れば明らかなとおり、原発には
未来はないからだ。ドイツとスイスとイタリアに次いで、
原子力からの賢明な撤退を選ぼう。




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